探偵の声で聴きたい短編小説まとめ

※要望や予想的な意味合いは無く一被疑者の個人的な妄想。私的なつぶやきの延長。なので朗読として考えると現実的ではない長さの作品ばかり

※すごく偏りがある

※作品と探偵についてのすごく独自の解釈もある

※軽い気持ちで見て頂けると幸いです。

 

 

 

江戸川乱歩「赤い部屋」

乱歩といったらこれ!な明智シリーズも聴きたいけど、個人的にはこういう狂気で煮詰めたような作品が聴きたい。T氏の狂気性が右肩上がりになっていく様をどんな風に表現するのか気になる。「爆笑」でこの上ない狂気的な笑いを聴いた後だからなおさら…T氏の最後の笑い方とか……全編通してT氏に重ねられるところもありそうだけど個人的には、探偵、過去にこの会に参加したことがありそうだと思った。6人の聴衆は退屈な日々に刺激を求めているので、「退屈」というより「刺激」の方に重心を置くとうっすらと探偵が浮かび上がるような気もする。

 

江戸川乱歩人間椅子

やっぱり「押絵~」の朗読練習で探偵と乱歩の親和性の動かぬ証拠を手に入れてしまったからには他にも色々聴きたくなる。「赤い部屋」とはまた違った狂気性を持つ独白文の読み方が気になる。変態性と言った方が近いかもしれない。初めの手紙のぬめっとした怖さと最後の手紙のカラッとした後味がより不気味で、なあ〜んだ!では終われない気持ち悪さ、単純に朗読だとどうなるのか。それはそうと探偵の読む独白、良いですよね。朗読の技術とかに詳しくはないけれど、差し迫る感情の表現が上手で息を呑んでしまう。探偵の独白が好きすぎて「山月記」朗読のことを独白ボイスと呼んでいる。独白ボイス2023、待ってます。

 

太宰治「女生徒」

これは個人的に太宰作品の中でもかなり好きな作品なのだが、女の子の一人称の語りで書かれているため言葉選びやリズムが独特で、探偵の地に足付いた声質との良い違和感が味わえそうだなと思う。内容面というよりは耳心地重視。そういう意味では大人の女性の書簡体とかもめちゃくちゃ聴きたいけどあんまり思い浮かばなかった(心当たりがあったら是非教えてください)。

 

太宰治「駆け込み訴え」

こちらも終始独白体で、「女生徒」とは違った意味で言葉のリズムが気持ち良いので聴きたい。独白、というよりは懺悔。初めは「女生徒」と同じように耳心地に注目していたけど、改めて読むと、探偵の声は「愛憎」との相性が良いんじゃないかという思いが込み上げてくる。二律背反というか、矛盾した心、という命題が非常に似合うというか。何がそうさせてるのかはちょっと分からない。二重人格説なのか、はたまた単純に落ち着いた声とアクセントの付け方によるイメージなのかも。

 

萩原朔太郎猫町

猫とかが好きだから猫とかを探すのが得意というパワポの文言を見ながら思いついたのがこれ。どこまでが現実で何が幻想なのか?という境界線が曖昧な世界観も凄く合うと思う。見知った町を少し歩いただけのはずなのに全く知らない町を歩いているかのような体験、今作ではクスリやら方向障害がトリガーだった気がする(手元に無いのでちょっと曖昧)けど、猫を探しているうちに見知らぬ町に迷い込み、猫のようなものを見る探偵はいる。作者が詩人のため詩的であり小説的でもある独特な朗読リズムがありそうなので聴きたい。

 

梶井基次郎桜の樹の下には

今回挙げる中で1番分量的にも知名度的にも現実的。美しく完璧だと思われるものへのどうしようもない不安感。ここからは全て妄言なので軽く聞き流して欲しいが、「桜の樹の下には死体が埋まっている」の概念は、フィクサーの「探偵は二重人格である」で応用できる気がしてきた。今からなんかよく分からないような事を言うが、二重人格かどうかなんてことは分からない探偵を桜の樹とすると、フィクサーを聴いた被疑者(今作でいう「俺」)が「探偵は二重人格である!」という妄想をする事で探偵へのある種の不安感を消し去ろうとする。二重人格という妄想(今作では死体が埋まっているという妄想)によりここで言う「憂鬱が完成」し平衡感覚を取り戻す被疑者(「俺」)。みたいな。簡単に言い直してみると、美しく完璧に悪を歌いこなす探偵への不安感を二重人格説によって消し去ろうとした被疑者が、この作品の概念に当てはまりそうってなこと。ほんの思いつきです。

 

森見登美彦「きつねのはなし」

個人的に大好きな、淡々とした不安感に包まれたホラー連作短編の表題作品。とにかく探偵のホラーがもっと聴きたい。森見作品を象徴する男子大学生の汗と涙でキラキラした京都はそこには無く、すごくジメジメとまとわりついてくる恐怖感が理想的で、探偵の声でさらにそれが増しそうで良い。というか恐怖との声の相性が本当に良い。情けない声や腑抜けたような声も自由自在なのに、朗読時の硬めな声質で一気に緊張感を持たせることが出来る感じ、本当にスゲ〜と「山月記」を爆聴きしながら思います。

 

夢野久作キチガイ地獄」

色んな意味で1番現実的でない作品。探偵の夢野久作聴きたいよ〜うと漠然と思ったがそもそもあまり夢野の短編小説を読んだことがないので長編から一作。これも個人的な好みに過ぎないが、夢野久作の文体の特徴として、カタカナが多く、文章のリズムに独特の節があるので、そこの部分の表現の仕方がやっぱり気になる。あとこの作品は性質上最後に向かってやたら感嘆詞が多いので、朗読だとどう狂っていくのかの想像もしやすい。この作品ではないけど、夢野でいうと「ドグラマグラ」の「胎児よ胎児よ何故踊る」の部分も個人的には聴いてみたい。凄く怖そう。

 

⑨ポー「ヴァルデマー氏の死の真相」

乱歩がイケるならポーもイケるでしょうという浅はかなひらめきに他ならないが、この作品は死の瞬間に催眠術をかけたら死を押しとどめることが出来るのかという研究の話で、なんだか、ほら…もうなんかどこかの配信で同じようなことを言ってた気すらする。今まで挙げた作品の内容面だけで考えると1番探偵との親和性が高そうな作品。

 

 

他にも筒井康隆京極夏彦など、まだ短編は読めてないけど合う作品がありそうな作家も沢山いるのでまた思いつき次第覚え書きとして書くかもしれません。

また何かで朗読、聴けたらいいな

 

にじ文学「山月記」朗読をまだ聴いていない方がいらしたら、是非聴いてください。凄く良いので。ビバ独白。

 

私的にはこれが聴きたいな〜な短編小説がもしありましたら是非waveboxに投げてくださると助かります。

 

丁寧に最後まで読んで頂いてありがとうございました。